私たちが、いま普通に食べている野菜の多くが、一代限りで次世代に子孫を残すことができない……お恥ずかしいことながら、この舞台の脚本のお話をいただくまで、正直私はまったく知りませんでした。当たり前のように、作物は実がなったらその実から種を採り、それを蒔いて、また次の年に収穫するものだとばかり思っていました。
だけど、それが違った。
今、私たちが食べているものは、そしてこれからの未来を生きる子供たちが食べていくであろうものは、かつて私たちの先祖が食べてきたものとは違うものなのだということを改めて知らされました。
もちろん、そのことが何を意味するのか、将来的にどういう結果を引き起こすことになるのか、それはまだ誰にもわかりません。
ある一方から見ればそれはとても良いことでも、別の面から見れば悪いこともある。物事というのは常に多面的で、良いとも悪いとも言えないものですから。
ですが、少なくとも、知らないよりは知っていた方がいい。
私はそう思いました。
知らなければ、考えることも選ぶこともできません。判断することも、批評することもできません。とにかく知ろう、そして考えよう。選びとるのは私たちなのだから。
そんな想いでこのお話を書きました。
とにかく何も知らない状態から始まった脚本づくり、本当に多くの方々にたくさんのことを教えていただきました。種を守ろうと活動している方々、実際に種を採って農作物を育てている方々、その流通に携わっていらっしゃる方々……その中で感じました。知らないことを『知る』というのは、何と楽しい冒険なのであろうか、と!
世の中にはまだまだ知らないことがたくさんある、知らなければならないことがたくさんある。
もしもこの舞台が、皆様の『知る』冒険の一端に加えていただけるのなら、これ以上嬉しいことはありません。
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